量子通信・理論
研究概要
量子通信では、量子力学の性質を使って情報を安全に伝える方法や、離れた場所の量子系をつなぐ方法を研究します。理論チームでは、量子情報理論をもとに通信方式やネットワークを数理モデルとして表し、安全性や通信速度、損失や雑音に対する性能を調べています。
量子通信・理論(QCT: Quantum Communication Theory)チームの研究対象は、量子鍵配送(QKD)や量子中継、量子もつれを利用したネットワークなどです。新しい通信プロトコルを考えるだけでなく、どこまで性能を高められるのか、どの条件で安全性を保証できるのかといった基本的な限界も研究しています。
量子もつれを遠くまで届ける
量子ネットワークでは、離れた地点どうしで量子もつれを共有する必要があります。しかし、光子は通信路を進む途中で失われるため、距離が長くなるほど量子もつれを生成することが難しくなります。私たちは、量子もつれ交換や量子中継の方式を工夫し、損失の大きい通信路でも効率よく量子もつれを配送する方法を研究しています。
代表的な研究にはsingle-click entanglement swappingを用いた偏光量子もつれ配送や損失に強いGHZ状態配送プロトコルがあります。
装置の内部を完全に信頼せずに安全な鍵を共有する
量子鍵配送では、量子力学の性質を利用して盗聴を検出し、安全に暗号鍵を共有します。デバイス独立型の方式では、使用する装置の内部動作を細かく仮定しなくても、安全性を評価できます。私たちは、ベル不等式を利用した量子鍵配送や、複数の利用者が同じ鍵を共有する方式について、通信距離や雑音、検出効率の影響を理論的に調べています。
代表的な研究には長距離デバイス独立量子鍵配送やデバイス独立型の会議鍵合意があります。
複数拠点の量子もつれを通信や計測に使う
量子ネットワークでは、2地点だけでなく、複数の地点にまたがる量子もつれも利用できます。私たちは、GHZ状態やW状態などの多体量子もつれを効率よく配送する方法と、それを通信や分散型の量子センシングに応用する方法を研究しています。通信路に損失や雑音がある場合でも、情報を安全に扱いながら計測できる仕組みを検討しています。
代表的な研究には損失耐性のあるGHZ状態配送を用いた秘匿型量子ネットワークセンシングやW状態を利用した量子ネットワークがあります。
研究の仕方
量子通信・理論チームでは、量子力学と情報理論を使って通信プロトコルやネットワークを数理モデルとして表します。そのモデルから安全性や通信速度、損失や雑音に対する性能を解析し、必要に応じて数値シミュレーションで確かめます。研究テーマによっては、当研究室の量子通信実験チームや国内外の実験グループと共同で、理論的に提案した方式の実証にも取り組みます。