量子通信・実験
研究概要
量子通信・実験チームでは、光子を使って量子情報を生成・伝送・測定するための技術を研究しています。量子ネットワークを実現するには、量子もつれを作るだけでなく、光ファイバを通して安定に届け、離れた場所の光子を精密に干渉させて検出する必要があります。
量子通信・実験(QCE: Quantum Communication Experiment)チームでは、光学系や光ファイバを使った実験を中心に、量子もつれ光源、量子もつれ交換、位相安定化、波長多重などの技術に取り組んでいます。理論で提案された通信方式を実際の光学系で検証し、将来の量子ネットワークに必要な技術を研究しています。
実際の光ファイバで量子もつれをつなぐ
量子ネットワークを広げるには、離れた地点の間で量子もつれを生成する「量子もつれ交換」が必要です。実際の光ファイバでは、温度や振動などによって光の位相が変化するため、長時間にわたって安定した干渉を保つことが課題になります。私たちは、異なる波長の光を使って位相を安定化させ、長距離の光ファイバで量子もつれを伝送・接続する実験を行っています。
代表的な研究:10 km光ファイバでの単一光子量子もつれ伝送、3 kmの敷設光ファイバを用いた量子もつれ交換
多重化できる量子もつれ光源を作る
量子ネットワークで多くの利用者や通信路を同時につなぐには、複数の波長を効率よく使うことが重要です。私たちは、通信用の波長分割多重技術と組み合わせられる偏光量子もつれ光子対光源を開発し、複数の周波数チャネルを使い分ける方法を研究しています。光源のスペクトルや量子もつれの品質を測定し、多重化した場合にも量子もつれの品質を保てる条件を調べています。
代表的な研究:50 GHz高密度波長分割多重に対応した偏光量子もつれ光子対光源、周波数多重による量子もつれ交換
量子通信と現在の光通信を同じネットワークで使う
量子ネットワークを実際の通信インフラへ導入するには、量子信号と通常の光通信を同じ光ファイバで扱う技術も必要です。通常の光通信に使う強い光信号から生じる雑音やクロストークは、単一光子レベルの量子信号に大きな影響を与えます。私たちは、波長の配置や光ファイバの種類によって影響がどう変わるかを実験し、量子通信と既存の光通信を共存させる方法を調べています。
代表的な研究:中空コアファイバにおける量子通信路と古典DWDM通信路の共存、波長多重時のクロストーク評価
研究の仕方
量子通信・実験チームでは、研究の目的に合わせて光学系を設計します。レーザーや光ファイバ、各種光学素子、単一光子検出器などを組み合わせて実験系を構築し、量子状態を生成・伝送して測定データを集めます。結果を解析しながら、光学系や安定化方法を調整していきます。長時間の測定では、位相や偏光を安定に保つための制御も重要です。研究テーマによっては、NICTや国内外の大学・研究機関と共同で実験を行います。